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東京地方裁判所 昭和31年(行)114号 判決 1958年2月22日

東京都杉並区西高井戸一丁目五十三番地

原告

ルミナ株式会社

右代表者代表取締役

松田全弘

東京都千代田区大手町一丁目五番地

被告

麹町税務署長

磯部政治

右指定代理人

河津圭一

森川憲明

小林忠之

福田英敏

鈴木保

簔輪恵一

右当事者間の昭和三十一年(行)第一一四号法人税課税処分取消請求事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は、「被告が原告に対し昭和三十年十一月五日付をもつてなした、原告の昭和二十九年十一月一日から昭和三十年四月三十日までの事業年度(以下本件事業年度という)の法人税に関する所得金額を三十五万七千七百円、法人税額を十五万二百三十円、無申告加算税額を三万七千五百円と決定した処分は、これを取消す。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として、

一、原告は本件事業年度の法人税について確定申告をしなかつたところ、被告は昭和三十年十一月五日付で右事業年度の法人税に関する所得金額を三十五万七千七百円、法人税額を十五万二百三十円、無申告加算税額を三万七千五百円と決定し、同月六日原告に通知した。

二、原告は右処分を不服として昭和三十年十二月五日被告に対し再調査の請求をなしたが、三カ月を経過しても右請求に対し処分がなかつたので、昭和三十一年三月五日東京国税局長に対し審査の請求があつたものとみなされたところ、東京国税局長は、同年八月二十二日付で右請求を棄却する旨の決定をして、同月二十四日原告に通知した。

三、しかしながら、本件事業年度においては、原告には課税さるべき所得はなかつたのであるから、被告の前記処分は違法である。よつて右処分の取消を求めるため本訴に及んだと述べ被告の主張に対し、被告主張の事実中、本件事業年度において生じた原告の総益金及び総損金が被告主張のとおりであることは認めるが、原告は昭和二十六年十一月十二日から同月二十六日までの間に訴外飯田倉次に対し塗料を販売し、その売掛代金残額六十五万六千百円を有していたところ、昭和二十七年五月二十日頃右債権は回収不能となつた。よつて右貸倒金を本件事業年度において損金に算入すれば、原告には本件事業年度において所得はない、と述べ、乙第一、第二号証の成立を認めた。

被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、答弁として、請求原因第一、第二項は認め、第三項は争うと述べ、被告の主張として、本件事業年度において生じた原告の総益金は百三十三万八千五百九十一円五十五銭、総損金は八十五万二千五百七円であるから、本件事業年度における原告の所得は、右総益金から総損金を控除した四十八万六千八十四円五十五銭であり、右所得の範囲内で原告の課税標準額を三十五万七千七百円とした被告の本件処分は何ら違法ではないと述べ、原告の主張に対し、原告がその主張のような債権を有していたところ、右債権が原告主張の頃回収不能となつたことは認めるが、右貸倒金は右債権が不能となつた日を含む事業年度において損金に算入さるべきで、本件事業年度の損金に算入することは許されないと述べ立証として乙第一、第二号証を提出した。

理由

請求原因第一、第二項は当事者間に争がない。

そこで本件事業年度における原告の所得について判断すると、本件事業年度において生じた原告の総益金及び総損金については当事者間に争がないから、原告主張の貸倒金を本件事業年度において損金に算入すべきか否かの点について考察する。

原告がその主張のような債権を有していたところ、昭和二十七年五月二十日頃右債権が回収不能となつたことは当事者間に争がないが、右のような貸倒金は法人税法第九条第五項にあたる場合を除き、当該事業年度において債権の回収不能又は放棄の事実が確定した場合に限りその事業年度の損金に算入することができ、前事業年度において債権の回収不能又は放棄の事実が確定したものを後の事業年度に繰越して損金に算入することは許されないと解すべきであるところ、原告主張の債権が回収不能となつたのは本件事業年度以前の昭和二十七年五月二十日頃であり、且つ、本件は法人税法第九条第五項に該当しないこと明らかな場合であるから、右貸倒金を本件事業年度に繰越して損金に算入することは許されないといわなければならない。

そうすると原告の本件事業年度における所得は四十八万六千八十四円五十五銭と認めるべきであるから、右範囲内で原告の課税標準額を三十五万七千七百円としてなした被告の本件処分には違法はないというべきである。

よつて原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 石田哲一 裁判官 地京武人 裁判官 越山安久)

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